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【解説記事】日本医学会連合「オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態」

本記事では、⼀般社団法⼈⽇本医学会連合 診療ガイドライン検討委員会、オンライン診療検討 working group によって、2022年4月11日に公表された「オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態」について、ポイントを解説いたします。診療科別で簡潔にまとめていますので、ぜひご参考ください。


目次[非表示]

  1. 1.オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態:原則
  2. 2.オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態:各論
  3. 3.オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態:内科系
  4. 4.オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態:内科以外


(参考記事)日本医学会連合「オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態 」



オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態:原則

本提言の原則として、以下のように述べられています。

  • 本提言では対面での身体所見の診察や施設における検査を要しない形でのオンライン診療を併用することで、患者の通院負担を減らして、かかりつけ医が適切な診療間隔で患者の病態管理を行うことを目指すことを想定したものである。
  • 提示をするものは、「必要な時には対面を行うが、それ以外で基本的にオンラインにより診療を継続可能である疾患/病態」である。
  •  オンライン診療についてはかかりつけ医が診療することを基本にしており、本提言もかかりつけ医によるオンライン診療を想定したものである。専門医の継続診療が必要と思われる患者については、本提言では取り扱わない。 



オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態:各論

各論では、以下のとおり診療科別に12種類に分けて、オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態に関して記載されています。(※次の項目で各科目別にまとめています)


継続診療可能な疾患/病態の分類

Ⅰ 内科系
(1)生活習慣病
(2)呼吸器系
(3)循環器系
(4)消化器系
(5)内分泌系
(6)アレルギー
(7)睡眠障害
Ⅱ 神経系
Ⅲ 精神科系
Ⅳ 外科系
Ⅴ 泌尿器系
Ⅵ 産婦人科系の症状
Ⅶ 耳鼻咽頭科系
①慢性または亜急性の安定期に入った場合
②対面診察を必要としない場合
Ⅷ 眼科系 
Ⅸ 皮膚科系
Ⅹ 整形外科系
Ⅺ 小児科系
Ⅻ 歯科、口腔外科系

 引用元:日本医学会連合「オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態」(最終アクセス日:2022年10月24日)



オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態:内科系

内科系の疾患や病態については以下のとおりです。詳細はこちらをご確認ください。


(1)生活習慣病系

  • 糖尿病:食事療法、運動療法のみで治療中、あるいはそれに加えて少数の経口薬で治療中で血糖管理が良好で安定している糖尿病。ただし、およそ6ヶ月に1回の対面診療を組み合わせる必要がある。
  • 高血圧:家庭血圧を継続的に測定しており、患者の病態の変化を確認できる高血圧症。
  • 脂質異常症:長期にわたって血清脂質レベルが安定している成人脂質異常症。年数回の対面診療および血液検査を要する。
  • 高尿酸血症:長期にわたって痛風発作がなく、血清尿酸レベルが安定している成人高尿酸血症。年数回の対面診療および血液検査を要する。 


(2)呼吸器系 

診断が確定しており、管理良好で安定している下記の疾患。 ただし、およそ6ヶ月に 1 回の対面診療を組み合わせる必要がある。

  • 気管支喘息
  • COPD 


(3)循環器系

直近の半年は入院なく安定しており、半年から少なくとも1年に1回は採血などの検査を含む対面診療を行う条件下で

  • 内服治療中かつ/あるいは経カテーテル心筋焼灼術後の慢性心房細動など不整脈
  • 内服治療中の安定した慢性心不全
  • 内服治療中かつ冠動脈インターベンション治療・冠動脈バイパス術後の虚血性心疾患
  • 内服治療中かつ/あるいはインターベンション治療後の閉塞性下肢動脈硬化症

 

(4)循環器系

  • 逆流性食道炎
  • 慢性胃炎
  • 消化性胃十二指腸潰瘍(瘢痕期)
  • 慢性便秘症
  • 過敏性腸症候群
  • 機能性ディスペプシア
  • 脂肪肝
  • 胆嚢ポリープ
  • 無症候性胆石症 l 症状が安定している慢性膵炎


(5)内分泌系

  • 甲状腺疾患:長期にわたって処方量が変わらず、維持量の甲状腺ホルモン補充療法で甲状腺機能がコントロールされている成人甲状腺機能低下症(橋本病、甲状腺良性腫瘍術後、バセドウ病術後、バセドウ病アイソトープ治療後)。およそ6~12ヵ月に1回の対面診療および甲状腺機能検査を要する。
  • 副甲状腺・骨ミネラル代謝疾患:経口薬(骨吸収抑制薬、SERM、少量の活性型ビタミンD製剤)による治療を行っている原発性骨粗鬆症。およそ6~12ヵ月に1 回の対面診療および血液・尿検査や骨密度検査を要する。
  • 副腎疾患:内服治療で血圧、脈拍、血清カリウム値が良好にコントロールされている成人原発性アルドステロン症。およそ6か月に1回の対面診療および血液、尿検査を要する。
  • 性腺疾患:無治療またはホルモン療法で経過が安定している挙児希望がない月経異常。1年に1回の対面診療が望ましい。 


(6)内分泌系

  • アレルゲンが明確、かつ管理良好で安定している食物アレルギー
  • アレルゲンが明確、かつ管理良好で安定しているその他のアレルギー(薬剤、昆虫など) 


(7)睡眠障害

  • 病状が安定している「睡眠時無呼吸症候群」→身体合併症のモニタリングに留意すること
  • レム睡眠行動異常症→ただし,ベンゾジアゼピン受容体作動薬の漫然投与やレビー小体病への移行などに留意すること。
  • 不眠症→ただし,睡眠薬の漫然投与を行うことのないように留意すること。また,精神神経疾患への移行などにも留意すること。 



オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態:内科以外


内科以外の診療科については以下のとおりです。詳細はこちらをご確認ください。



Ⅱ 神経系

「診断確定後」に、「症状が安定している」ことを前提に

  • 脳卒中後遺症全般:ただし、定期的な採血が必要(とくにPT-INRなど)
  • 髄膜炎・脳炎後遺症
  • 頭痛全般(片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛,慢性連日性頭痛)
  • 神経痛・帯状疱疹後疼痛・視床痛(脳卒中後中枢性疼痛)
  • てんかん全般:ただし、定期的な血中濃度採血や、必要に応じて脳波検査が必要
  • 末梢性顔面神経麻痺
  • 顔面けいれんや三叉神経痛の慢性期
  • 周期性四肢麻痺:ただし定期的な採血が必要
  • 筋強直性ジストロフィー
  • チック障害
  • トゥーレット症候群
  • 書痙・職業性ジストニア・眼瞼痙攣、片側顔面痙攣:ボツリヌス療法を行わない場合
  • 発作性運動誘発性ジスキネジア
  • レストレスレッグス症候群
  • 本態性振戦
  • 脊髄炎後遺症
  • 脊髄血管障害後遺症
  • 重症筋無力症(眼瞼型)
  • 脳血管障害の経過観察および慢性期
  • 脳腫瘍の経過観察および慢性期
  • 頭部外傷慢性期
  • めまいの慢性期


Ⅲ 精神科系

  • 診断が確定し,かつ症状が安定している精神疾患,発達障害,てんかん,認知症,および睡眠障害

⇒睡眠薬をはじめとした向精神薬や抗てんかん薬の漫然投与を行わないよう注意すること

⇒添付文書の記載にしたがって,薬物血中濃度測定や副作用・身体合併症等のモニタリングを定期的に行うこと


Ⅳ 外科系

乳癌、甲状腺癌(年に一度以上の画像診断を行うことが条件) 


Ⅴ 泌尿器系 

診断と治療内容が確定しており、問診で症状の安定が確認できる下記の疾患。 但し、およそ6ヶ月に 1 回の対面診療を組み合わせる必要がある。

  • 前立腺肥大症
  • 過活動膀胱


Ⅵ 産科婦人科系の症状

本項目に限っては、かかりつけ医ではなく専門医が診ることを想定している。

  • 原因が明らかな初診以外の原発性無月経
  • 原因が明らかな初診以外の続発性無月経
  • 器質的疾患が除外されており、鎮痛剤のみで対応している機能性月経困難症
  • 状態が安定している妊孕性温存療法施行患者
  • 通院が困難な妊孕性温存療法施行患者
  • 週1-2回程度の点滴通院が可能な妊娠悪阻における自宅での摂食状態の確認
  • 管理方針が決定している妊娠糖尿病
  • 産褥の授乳指導(主に助産師によるもの)
  • 妊娠高血圧症候群の発症リスクを有する妊婦における定期妊婦健診の間を補完する診療
  • 周産期における便秘
  • 妊娠性静脈瘤
  • 妊娠性痒疹
  • 周産期関連では2回目以降の症状に関しては一回目の症状が参考になる事から対象病態となりうる


Ⅶ 耳鼻咽喉科系

①慢性または亜急性の安定期に入った場合

  • 舌下免疫療法の維持期
  • アレルゲンが明確、かつ管理良好で安定している通年性・季節性アレルギー性鼻炎
  • 人工内耳装用難聴者(児)のマッピング・訓練
  • 診断の確定した片頭痛・筋緊張性頭痛
  • 診断のついた顔面神経麻痺の経過観察
  • 診断のついたシェーグレン症候群の管理

②対面診察を必要としない場合 ニコチン依存症2回目以降

ニコチン依存症2回目以降


Ⅷ 眼科系

  • 結膜下出血
  • アレルゲンが明確、かつ管理良好で安定しているアレルギー性結膜炎


Ⅸ 皮膚科系

診断と治療内容が確定している(すなわち治療薬の変更が必要ない)下記の疾患を、十分な解像度のある映像によって病変を鮮明に観察できる場合 但し、およそ6ヶ月に 1 回の対面診療を組み合わせる必要がある 

  • 慢性蕁麻疹、抗ヒスタミン薬のみで症状が安定しているもの
  • 尋常性白斑、外用のみで症状が安定し、拡大がみられないもの
  • 脂漏性皮膚炎(被髪部位を除く)、ケトコナゾール外用あるいは medium 以下のステロイド外用で、症状が安定しているもの
  • 腋窩多汗症、外用のみで症状が安定しているもの
  • 尋常性痤瘡、外用のみで症状が安定しているもの


Ⅹ 整形外科系

整形外科領域の慢性疾患(骨粗鬆症、変形性関節症、関節リウマチ、慢性疼痛、脊髄・脊椎疾患慢性期など)で状態の安定した疾患で頻回の血液検査や画像が不要な投薬中心のもの 


Ⅺ 小児科系 

日本医学会連合「オンライン診療の初診に適さない症状」以外の病態は、オンライン診療継続可能と考えられる 


Ⅻ 歯科、口腔外科系

対面診療による治療による症状緩解後の顎関節症、三叉神経痛、舌痛症



オンライン診療のお悩み・ご不安など、ぜひご相談ください

今回の記事では、オンライン診療による継続診療可能な症状/病態について診療科別でポイントをまとめました。

オンライン診療に係る情報提供も幅広く行っておりますので、まずは貴院の状況をお伺いし、お手伝いさせていただければと思います。




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