【はじめての方向け】厚労省「オンライン診療ガイドライン」の解説 Vol.1
本記事では、これからオンライン診療を検討したいという方向けに、厚労省が公表している「オンライン診療の適切な実施に関する指針(通称:オンライン診療ガイドライン)」について2回に分けて解説いたします。Vol.1では以下の内容について掲載しておりますので、ぜひご参考ください。
(参考記事はこちら)
オンライン診療を取り巻く環境
2018年3月に公表、2022年1月に一部改訂がなされた厚労省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針(通称:オンライン診療のガイドライン)」では、オンライン診療を行うための最低限遵守する事項についてまとめられています。
その中で、今後の情報通信技術のさらなる活用により、医療業界においては以下のような検討や期待がなされています。
- 医師の勤務環境の改善として
- 医師が不足する地域における医師の偏在の解決策として
- 新型コロナウイルス感染症の流行への対策として
出典:厚生労働省 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(最終アクセス:2022年8月22日)
このような背景もあり、今後さらなる情報通信技術を用いた診療が普及していくと考えられると共に、治療における安全性や、適切な普及も推進していくことが求められています。
よって、「安全性・必要性・有効性」の観点から、医師、患者および関係者が安心してオンライン診療を実施できるよう、オンライン診療の手引きとしてまとめたものになっています。
本指針の関連法令等
オンライン診療に関連する法令等については大きく以下の3つのポイントとなっています。
-無診察治療等の禁止
- 医師法(昭和23年法律第201号)第20条
- 情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について(平成9年)
- 情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について(平成29年)
-医療提供場所
- 医療法(昭和23年法律第205号)第1条の2
- 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第1条
-情報セキュリティ関係
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第20条、第21条、第22条
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(平成17年)
- 医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン(令和2年)
- 個人情報の適切な取扱いに係る基幹システムのセキュリティ対策の強化について(依頼)(平成27年)
- 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(平成29年)
※詳細はこちらをご覧ください。
本指針に用いられる用語の定義と本指針の対象
本指針に関連するそれぞれの用語の定義について、以下にまとめます。これから検討をはじめる方はぜひ参考にしてみてください。
用語 |
定義 |
遠隔医療 |
情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為。 |
オンライン診療 |
遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、
患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、
リアルタイムにより行う行為。
|
オンライン受診
勧奨
|
遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して
患者の診察を行い、医療機関への受診勧奨をリアルタイムにより
行う行為であり、患者からの症状の訴えや、問診などの心身の状
態の情報収集に基づき、疑われる疾患等を判断して、疾患名を列
挙し受診すべき適切な診療科を選択するなど、患者個人の心身の
状態に応じた必要な最低限の医学的判断を伴う受診勧奨。
|
診療前相談 |
診療前相談は、日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と
直接的な関係が既に存在する医師(かかりつけの医師)以外の医
師が初診からのオンライン診療を行おうとする場合(医師が患者
の医学的情報を十分に把握できる場合を除く。)に、医師-患者
間で映像を用いたリアルタイムのやりとりを行い、医師が患者の
症状及び医学的情報を確認する行為。
|
遠隔健康医療相談
(医師)
|
遠隔医療のうち、医師-相談者間において、情報通信機器を活用
して得られた情報のやりとりを行い、患者個人の心身の状態に応
じた必要な医学的助言を行う行為。
|
遠隔健康医療相談
(医師以外)
|
遠隔医療のうち、医師又は医師以外の者-相談者間において、情
報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行うが、一般的
な医学的な情報の提供や、一般的な受診勧奨に留まり、相談者の
個別的な状態を踏まえた疾患のり患可能性の提示・診断等の医学
的判断を伴わない行為。
|
オンライン診療
支援者
|
医師-患者間のオンライン診療において、患者が情報通信機器の
使用に慣れていない場合等に、その方法の説明など円滑なコミュ
ニケーションを支援する者。家族であるか、看護師・介護福祉士
等の医療・介護従事者であるかは問わない。
|
診断 |
一般的に、「診察、検査等により得られた患者の様々な情報を、
確立された医学的法則に当てはめ、患者の病状などについて判断
する行為」であり、疾患の名称、原因、現在の病状、今後の病状
の予測、治療方針等について、主体的に判断を行い、これを伝達
する行為は診断とされ、医行為となる。
|
医療情報安全管理
関連ガイドライン
|
医療情報の取扱いに関わる厚生労働省、総務省及び経済産業省の
3省が策定している医療情報の安全管理に関するガイドラインの
総称。「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」
(厚生労働省)及び「医療情報を取り扱う情報システム・サービ
スの提供事業者における安全管理ガイドライン」(総務省、経済
産業省)を指す。
|
※上記の定義である遠隔医療、オンライン診療、オンライン受動推奨、遠隔健康医療相談の関連については、以下の図のようにまとめられています。(太枠内がオンライン診療ガイドラインの対象範囲を示しています。)
出典:厚生労働省 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(最終アクセス:2022年8月22日)
また、本指針の対象については以下のように明記されています。
- 本指針は、遠隔医療のうち、オンライン診療をその対象とする。
- オンライン受診勧奨については、一定の医学的判断の伝達を伴うものであり、誤った情報を患者に伝達した場合にはリスクが発生するものであるから、本指針の対象とする。本指針の適用に当たっては、「オンライン診療」を「オンライン受診勧奨」と読み替えて適用するが、直接の対面診療を前提とせず、処方も行わないので、Ⅴ1(1)「医師-患者関係/患者合意」の②ⅳ、(2)「適用対象」の②ⅰからⅳ及びⅶからⅸ、(3)「診療計画」並びに(5)「薬剤処方・管理」については適用しない(※詳細はこちらのP8部分を参照)。
- 遠隔健康医療相談については、本指針の対象とはしない。ただし、遠隔健康医療相談においても、診断等の相談者の個別的な状態に応じた医学的判断を含む行為が業として行われないようマニュアルを整備し、その遵守状況について適切なモニタリングが行われることが望ましい。
- 医師が情報通信機器を通して患者を診療する際に、医師と患者の間にオンライン診療支援者が介在する場合のうち、オンライン診療支援者は単に情報通信機器の操作方法の説明等を行うに留まる場合のほか、医師が看護師又は准看護師(以下「看護師等」という。)に対して診療の補助行為を指示する場合は、医師-患者間で行われるオンライン診療の一形態として、本指針の対象とする。一方で、医師が患者に対して通信機器を通した診療をしていない状態で、医師が看護師等の医療従事者に対してオンラインで指示を行い、その指示に従い当該医療従事者が診療の補助行為等を行う場合は、本指針の対象とはしない。
上記のまとめおよび具体例については下図をご参考ください。
出典:厚生労働省 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(最終アクセス:2022年8月22日)
オンライン診療のお悩み・ご不安など、ぜひご相談ください
本指針の前半部分の解説については以上となります。今回解説しましたように、オンライン診療を実施する際には「安全性・必要性・有効性」を考慮し、適切に運用することが重要だと言えます。
当社のオンラインシステムYaDoc(ヤードック)は、厚労省の「オンライン診療ガイドライン」に沿ったシステム設計および運用を提供しております。
これからオンライン診療を検討される方においては、自院の方針、新規システム導入、既存システムとの連携、運用オペレーションなど、整理すべきことが多々あるかと存じます。
オンライン診療に係る情報提供も幅広く行っておりますので、まずは貴院の状況をお伺いし、お手伝いさせていただければと思います。