【はじめての方向け】厚労省「オンライン診療ガイドライン」の解説 Vol.2
厚労省が公表している、オンライン診療の適切な実施に関する指針(通称:オンライン診療ガイドライン)について、実施に当たっての基本理念と指針の具体的適用をこちらで解説します。
これからオンライン診療の導入を検討される医療機関様や、どのような患者様にオンライン診療を活用するかについて知りたい方におすすめです。
目次[非表示]
- 1.オンライン診療の実施に当たっての基本理念
- 2.指針の具体的適用
- 2.1.オンライン診療の提供に関する事項
- 2.2.オンライン診療の提供体制に関する事項
- 2.3.その他オンライン診療に関する事項
(参考記事はこちら)
オンライン診療の実施に当たっての基本理念
- オンライン診療の目的は3つ
オンライン診療の実施にあたっての基本理念として、以下の目的で行うべきと定められています。
出典:厚生労働省 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(最終アクセス:2022年9月16日)
- 医師および患者は基本理念を念頭に置いたうえで、オンライン診療を行うべき
特に、医師については、i 医師ー患者関係と守秘義務において、かかりつけの医師において行われることが基本であり、対面診療と適切に組み合わせて行うことが求められています。
また、ⅱ医師の責任では、オンライン診療は原則として当該医師が責任を負って行い、オンライン診療が適切でない場合には、対面による診療に切り替えることが求められています。
出典:厚生労働省 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(最終アクセス:2022年9月16日)
- その他の項目について
以下の項目についてまとめられており、詳細についてはこちらをご確認ください。
ⅲ 医療の質の確認及び患者安全の確保
ⅳ オンライン診療の限界などの正確な情報の提供
ⅴ 安全性や有効性のエビデンスに基づいた医療
ⅵ 患者の求めに基づく提供の徹底
指針の具体的適用
オンライン診療の提供に関する事項
ここでは、オンライン診療を実施するに当たり、「最低限遵守する事項」及び「推奨される事項」が、その考え方と共に示されています。全部で6項目あり、ポイントを抑えて解説いたします。
- 医師ー患者関係
- 適応対象
- 診療計画
- 本人確認
- 薬剤処方・管理
- 診察方法
1.医師ー患者関係
<考え方>
- オンライン診療においては、患者が医師に対して、心身の状態に関する情報を伝えることとなることから、医師と患者が相互に信頼関係を構築した上で行われるべきである。このため、双方の合意に基づき実施される必要がある。
<最低限遵守する事項>
- オンライン診療を実施する際は、医師と患者との間で合意がある場合に行うこと。
- 合意を行うに当たり、医師は患者がオンライン診療を希望する旨を明示的に確認すること。
- オンライン診療が適切でないと判断した場合は、オンライン診療を中止し速やかに適切な対面診療につなげること。
- 医師は、患者の合意を得るに先立ち、オンライン診療で得られる情報は限られるため対面診療を組み合わせる必要があることや、医師がオンライン診療の実施の可否を判断すること等の説明を行うこと。
2.適応対象
<考え方>
- オンライン診療では、初診については「かかりつけの医師」が行うことが原則である。
- また、オンライン診療後に対面診療が必要な場合については、「かかりつけの医師」がいる場合には、オンライン診療を行った医師が「かかりつけの医師」に紹介し、「かかりつけの医師」が実施することが望ましい。
<最低限遵守する事項>
- オンライン診療が困難な症状を踏まえて、医師がオンライン診療の実施の可否の判断を行うこと。
- 該当の症状については、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状(P13)」を参照のこと。
- オンライン診療が適さない場合には対面診療を実施する。対面診療が可能な医療機関を紹介すること。
- 緊急性が高い症状の場合は速やかに対面受診を促すこと。
<適切な例>
- 生活習慣病等の慢性疾患について、定期的な直接の対面診療の一部をオンライン診療に代替し、医師及び患者の利便性の向上を図る例
- 生活習慣病等の慢性疾患について、定期的な直接の対面診療にオンライン診療を追加し、医学管理の継続性や服薬コンプライアンス等の向上を図る例
3.診療計画
<最低限遵守する事項>
- 医師は、オンライン診療を行う前に患者の心身の状態について直接の対面診療により十分な医学的評価(診断等)を行い、その評価に基づいて次の事項を含む「診療計画」を定め、2年間は保存すること。
出典:厚生労働省 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(最終アクセス:2022年9月16日)
- 上記に関わらず、初診からのオンライン診療を行う場合については、診察の後にその後の方針(例えば、次回の診察の日時及び方法並びに症状の増悪があった場合の対面診療の受診先等)を患者に説明する。
- オンライン診療において、映像や音声等を、医師側又は患者側端末に保存する場合には、それらの情報が診療以外の目的に使用され、患者又は医師が不利益を被ることを防ぐ観点から、事前に医師-患者間で、映像や音声等の保存の要否や保存端末等の取り決めを明確にし、双方で合意しておくこと。
- オンライン診療を行う疾病について急変が想定され、かつ急変時には他の医療機関に入院が必要になるなど、オンライン診療を実施する医師自らが対応できないことが想定される場合、そのような急変に対応できる医療機関に対して当該患者の診療録等必要な医療情報が事前に伝達されるよう、患者の心身の状態に関する情報提供を定期的に行うなど、適切な体制を整えておかなければならない。
4.本人確認
<最低限遵守する事項>
- 医師が医師免許を保有していることを患者が確認できる環境を整えておくこと。
- 原則として、医師と患者双方が身分確認書類を用いてお互いに本人であることの確認を行うこと。
<適切な例>
- 医師の免許確認:HPKIカード(医師資格証)、医師免許証の提示の活用
- 患者の本人確認:健康保険証(被保険者証)、マイナンバーカード、運転免許証等の提示
5.薬剤処方・管理
<最低限遵守する事項>
- 患者の心身の状態の十分な評価を行うため、初診からのオンライン診療の場合及び新たな疾患に対して医薬品の処方を行う場合は、日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」(P20参照)等の関係学会が定める診療ガイドラインを参考に行うこと。
- ただし、初診の場合には以下の処方は行わないこと。
出典:厚生労働省 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(最終アクセス:2022年9月16日)
6.診察方法
<考え方>
- オンライン診療では、得られる情報に限りがあるため、医師は、直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の状態に関する有用な情報を得られるよう努めなければならない。
<最低限遵守する事項>
- 医師がオンライン診療を行っている間、患者の状態について十分に必要な情報が得られていると判断できない場合には、速やかにオンライン診療を中止し、直接の対面診療を行うこと。
- オンライン診療では、可能な限り多くの診療情報を得るために、リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を含む情報通信手段を採用すること。直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には補助的な手段として、画像や文字等による情報のやりとりを活用することは妨げない。ただし、オンライン診療は、文字、写真及び録画動画のみのやりとりで完結してはならない。
- オンライン診療において、医師は、情報通信機器を介して、同時に複数の患者の診療を行ってはならない。
- 医師の他に医療従事者等が同席する場合は、その都度患者に説明を行い、患者の同意を得ること。
<推奨される事項>
・医師と患者が1対1で診療を行っていることを確認するために、オンライン診療の開始時間及び終了時間をアクセスログとして記録するシステムであることが望ましい。
・オンライン診療を実施する前に、直接の対面で、実際に使用する情報通信機器を用いた試験を実施し、情報通信機器を通して得られる画像の色彩や動作等について確認しておくことが望ましい。
オンライン診療の提供体制に関する事項
全5項目からなり、主に医師の所在と患者の所在の考え方について記載されています。ここでは、ポイントを抑えて3、4、5について解説いたします。
- 医師の所在
- 患者の所在
- 患者が看護師等といる場合のオンライン診療
- 患者が医師といる場合のオンライン診療
- 通信環境(情報セキュリティ・プライバシー・利用端末)
3.患者が看護師等といる場合のオンライン診療
<考え方>
- 患者が看護師等といる場合のオンライン診療(以下「D to P with N」という。)は、患者の同意の下、オンライン診療時に、患者は看護師等が側にいる状態で診療を受け、医師は診療の補助行為を看護師等に指示することで、予測された範囲内における治療行為や予測されていない新たな症状等に対する検査が看護師等を介して可能となるもの。
4.患者が医師といる場合のオンライン診療
<考え方>
- オンライン診療の形態の一つとして、患者が主治医等の医師といる場合に行うオンライン診療であるD to P with Dがある。D to P with Dにおいて、情報通信機器を用いて診療を行う遠隔地にいる医師は、事前に直接の対面診療を行わずにオンライン診療を行うことができ、主治医等の医師は、遠隔地にいる医師の専門的な知見・技術を活かした診療が可能となるもの。
- ただし、患者の側にいる医師は、既に直接の対面診療を行っている主治医等である必要があり、情報通信機器を用いて診療を行う遠隔地にいる医師は、あらかじめ、主治医等の医師より十分な情報提供を受けること。
- 診療の責任の主体は、原則として従来から診療している主治医等の医師にあるが、情報通信機器の特性を勘案し、問題が生じた場合の責任分担等についてあらかじめ協議しておくこと。
5.通信環境(情報セキュリティ・プライバシー・利用端末)
<考え方>
- オンライン診療の実施に当たっては、利用する情報通信機器やクラウドサービスを含むオンライン診療システム(※1)及び汎用サービス(※2)等を適切に選択・使用するために、個人情報及びプライバシーの保護に配慮するとともに、使用するシステムに伴うリスクを踏まえた対策を講じた上で、オンライン診療を実施することが重要である。
※1 オンライン診療システム:オンライン診療で使用されることを念頭に作成された視覚及び聴覚を用いる情報通信機器のシステム
※2 汎用サービス:オンライン診療に限らず広く用いられるサービスであって、視覚及び聴覚を用いる情報通信機器のシステムを使用するもの
1)医師が行うべき対策
- 医師は、オンライン診療に用いるシステムによって講じるべき対策が異なることを理解し、オンライン診療を計画する際には、患者に対してセキュリティリスクを説明し、同意を得なければならない。
- 医師は、システムは適宜アップデートされ、リスクも変わり得ることなど、理解を深めるべきである。
1-1)共通事項
出典:厚生労働省 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(最終アクセス:2022年9月16日)
1-2)医師が汎用サービスを用いる場合に特に留意すべき事項
- 医師が汎用サービスを用いる場合は、1-1)に加えて下記の事項を実施すること。
出典:厚生労働省 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(最終アクセス:2022年9月16日)
1-3)医師が医療情報システムに影響を及ぼす可能性があるシステムを用 いる場合
- 医療情報システムに影響を及ぼす可能性があるオンライン診療システムを用いる時は、1-1)に加えて下記の事項を実施すること。
出典:厚生労働省 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(最終アクセス:2022年9月16日)
その他、2)オンライン診療システム事業者が行うべき対策や、3)患者に実施を求めるべき内容についてはこちらをご確認ください。
その他オンライン診療に関する事項
ここでは、以下の項目について述べられています。
- 医師教育/患者教育
- 質評価/フィードバック
- エビデンスの蓄積
特に、オンライン診療の実施に当たっては、医学的知識のみならず、情報通信機器の使用や情報セキュリティ等に関する知識が必要となります。よって、医師は、厚生労働省が定める研修を受講することにより、オンライン診療を実施するために必須となる知識を習得しなければなりません。(※2020年4月以降、オンライン診療を実施する医師は厚生労働省が指定する研修を受講しなければならない)
オンライン診療研修実施概要についてはこちらをぜひご参考ください。
オンライン診療のお悩み・ご不安など、ぜひご相談ください
今回の記事では、オンライン診療を提供するにあたっての「基本理念や具体的な適用」についてポイントを抑えて解説いたしました。オンライン診療を提供する医師には、医学的知識のみならず、情報通信機器の使用や情報セキュリティ等に関する知識も求められます。
当社のオンラインシステムYaDoc(ヤードック)は、厚労省の「オンライン診療ガイドライン」に沿ったシステム設計および運用を提供しております。これからオンライン診療を検討される方においては、自院の方針、新規システム導入、既存システムとの連携、運用オペレーションなど、整理すべきことが多々あるかと存じます。
オンライン診療に係る情報提供も幅広く行っておりますので、まずは貴院の状況をお伺いし、お手伝いさせていただければと思います。